エジプトの黒砂漠・白砂漠にて (2008年)

黒砂漠
黒砂漠、白砂漠と人が呼んでいるので、てっきり、黒い砂と白い砂が一面に広がっている砂漠だと思っていた。
ところが黒砂漠は、広々とした高原に、もろそうな黒い岩山がポツポツと立っている。
そして、掌に入るくらいの大きさの石炭のようなつやのある黒い小石が、あたり一面に転がっている。
この小石をよく見ると、あたかも誰かが彫ったように思えるほどのリアルな形で、小鳥、トカゲ、野原の花、時には人面の形をしている。
この辺は岩石が柔らかいので、複雑に吹く風によって岩石同士がぶつかり合い、そのような形になるそうだ。

白砂漠
一方、白砂漠のほうは、白い大きな石膏彫刻の世界である。
大きな白いキノコが地面からニョキっと生えていたり、 ばかでかい白鳥が空を見上げたりしている。 まるで彫刻家の野外展覧会の様だ。
石灰でできた岩山が、長い年月をかけて風化したそうだ。

私は期待していた「砂」にめぐり会えず、なんだか欲求不満になってしまった。
そこで、この辺には天然温泉があると聞いていたので、不満解消のため、さっそく温泉を探すことにした。

ゴビ砂漠のような石がゴロゴロした平原の真ん中に、コンクリートで固めたプールみたいなものがあった。
プールの中に、直径1メートルくらいの大きな土管でお湯が引かれている。
ジャージャーと大きな音を立ててお湯が土管の口からあふれ出ている。正真正銘の天然湧き湯だそうだ。

イスラム教だからだろうか、子供を含めて男ばかりであった。
それでも私は、エジプトまで来て「砂」に会えない苛立ちがあったので、その勢いで男にまじって風呂に浸かった。
土管風呂
土管の口から勢いよくあふれ出るお湯を、滝に打たれるように頭から浴びた。

ふと気がつくと、周囲にいた人たちの痛いような視線を思いっきり感じ、ものすごく恥ずかしくなった。